学ぶことの“楽しさ”に出会う
経済学部の高大接続教育「経済入門」

中央大学の特色ある教育・研究のいま ②

 建学の精神「實地應用ノ素ヲ養フ」とユニバーシティ・メッセージ「行動する知性。」のもと、社会の課題解決と新しい価値創出に取り組んできた本学。高等教育を取り巻く変化に応じて、いま展開されている特色ある教育・研究に焦点をあてる。

 高校生が大学生と共に学ぶ経済学部の講座「経済入門」は、中央大学が先進的に進める高大接続教育の一つ。現役高校生が全国から本学の授業を受講でき、大学での学び方と経済学の魅力を早期に体験できる取り組みだ。講座を進める教員と職員、受講する高校生と、かつて受講し本学に進学した在学生らに取材した。

経済学は「経済“楽”」
まずは“面白さ”の実感から

 高大接続改革とは、文科省が進める、高校教育・大学教育・入試を一体化するという制度改革のこと。その理念を踏まえ、本学では、経済学部の講座「経済入門」において高大接続教育・高大接続入試が実施されている。同講座は、現役高校生が学部1年生と共に受講でき、さらに全国約200名の高校生がオンライン聴講をしている。未知の学問に踏み出し、大学生と学び合う経験は、進路への視野を広げる貴重な機会だ。

 担当する経済学部の武田勝准教授は「経済学というと、『難しそう』『数学が大変そう』といったイメージをもたれがちである。しかし、経済学は本来とても面白い学問であるということをまずは知ってほしい」と語る。講座名を「経済学入門」ではなく「経済入門」としているのも、「理論のミニチュア版ではなく、経済学的なアプローチで経済を分析する体験をしてほしいから。楽譜を見ただけで面白いと思える人はなかなかいないが、歌ったり演奏したりすれば楽しくなる。それと同じで、経済学も“使う”と楽しくなる」とも語る。

経済学部・武田勝准教授
まず“楽しい”と感じてもらうのが大事。
高校の政治経済の単なる延長にならないように、経済と経済学を組み合わせています。

 取り組みの背景には、「高校生の学部選びにミスマッチがある」という危機感がある。多くの高校生は進学する学部で何をどう学ぶのかを知らず、その結果、入学後の学びへの意欲低下を招く。「高校まではQ&AのAを覚えるのが勉強。大学はQ=問いを学ぶ場所」(武田准教授)であり、大学の学び方を早い段階で知ることで、「入学後の講義の受け方が大きく変わる」と指摘する。このプログラムの最大の狙いは、“経済学の楽しさ”だけでなく、“考える学びの楽しさ”にも触れる機会をつくること。アクティブ・ラーニング型、つまり単に講義を聞くだけではない参加型で、与えられた課題に対して高校生が大学生と一緒に「ワーク」を行い議論し、答えを発表し合う機会が毎回設けられている。

唯一の正解はなく、問いに向き合う
初めての経済学が広げた視野

 毎週火曜日の5時限目に多摩キャンパスで受講する須永実玖さんは高校2年生。大学から届いた案内メールでこの講座を知り応募した。亡き祖父が本学の卒業生であったことも動機の一つという。「通学当初は、経済学という学問や、経済学部と商学部の違いについても分からず、高校では触れない視点に戸惑いもあった。しかし、思っていた以上に興味深く、考え方の幅が広がった」と話す。大学生とのグループワークについても「皆さんが優しく受け入れてくれたことで、緊張せず意見を述べられた」と振り返る。放課後に電車で1 時間以上かけての通学だが、「自分で考え、自分なりの『答え』を導き出せる講座」と充実感を語っている。

須永実玖さん(東京女学館高等学校2年)
大学まで通うのは少し緊張しましたが、実際に教室で受けると楽しくて。学んだことを普段の高校の授業でも関連づけて考えてみたりしています。

 一方、山形からオンラインで受講する高校2年生の安達まどかさんは、進学フェアで本学のブースを訪れ、この履修制度を勧められたことがきっかけだ。第1回ガイダンスで「高校と違って唯一の正解がない学問」と説明され、「大学は問いに向き合う場所なんだと驚いた」という。オンラインのグループワークは全員初対面で、緊張感を持ちつつ意見交換を行った。「大学生がワーク内で議論をうまく回してくれたときは、とても大人に感じました」と印象を語る。

安達まどかさん
(山形県立山形西高等学校2年)
オンライン受講
高校の授業では「政治経済」をとっていなかったのでまったく未知の分野でしたが、講座で経済学の面白さを知りました。

 高校生が大学生の思考・進行・姿勢に触れることで刺激を受けると同時に、その交流が、大学生側にも良い影響をもたらしている。「高校生に質問されて答えられないのは恥ずかしいと思いますからね」と指摘するのは、ワークのやりとりを見守る武田准教授。
 高校生はこの講座を無料で受講でき、さらに入学後は単位として認定される。また、高2以降にA以上の評価を修めた高校生は、高大接続入試(資格・実績評価型)に出願できる。須永さんも安達さんも高大接続入試について認知しており、「魅力的な制度」と口をそろえる。

高校時代の受講で
「学びの姿勢」を知る

 経済学部の高大接続教育は、2017(平成29)年度に科目等履修生制度の対象を高校生に拡大したところからスタート。翌年、附属高校とのオンライン授業を開始し、20年度からは対象を全国の高校生まで拡大し、高大接続入試も導入した。

大学生の正規科目100分の講義を、高校生も一緒に受講する様子。
オンラインでも多数の高校生が参加している。

 現在、経済学部2年で伊藤伸介ゼミに所属する伊藤環太さんは、高校時代にオンラインで「経済入門」を受講した経験がある。鳥取から講座にアクセスしたが、「環境的なストレスは特になかった」と振り返る。受講の動機は、受験先として本学に関心を持ち、自ら情報を集める中でこの制度を知ったことだった。受講により「経済学の輪郭を知れたというか、はっきりした感じがして、経済学部への進学を決めた」という。

伊藤環太さん(経済学部2年)
高校生のときのオンライン受講で、より自分が何をしたいか、というか進路が定まった。
それは間違いないです。

 現在所属しているゼミでは、ショッピングモールで実施されたアンケート結果を解析し、企業に向けた提案を行うプロジェクトにも参加している伊藤さん。「受講したことが、他の学生より意欲の面で一歩リードできたことにつながったかもしれない」と自己分析する。講座を受講している高校生たちには、「授業ではスライドを追うだけでなく、頭の中で『なんでだろう』『ここはおかしくないか』と突っ込みを入れながら聞くようにすべき」と、自身の大学での学びも踏まえてアドバイスしている。

 これは高校段階で、「ただ聞く学び」から「問いを持って聞く学び」への切り替えを実行できたということ。経済学部の高大接続教育のプログラムが狙う“学び方の転換”が、実際に機能したことを示す一例ともいえよう。
 本学経済学部での高大接続教育には、「高校生の段階で経済の楽しさを知った学生が、入学後に学びをリードする存在になってほしい」という学部関係者の願いもある。大学担当者はこの制度の魅力を広く広報していきたいとしており、受験を控えた家族や関係者を持つ学員にもぜひ知ってもらいたいとしている。

番場めぐみさん
(経済学部事務室 高大接続教育担当)
まだまだ高校生自ら調べて受講にたどり着いているというのが現状で、制度の魅力をより広く届けることが課題です。

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