白門の絆
2025(令和7)年「大相撲九州場所」の開幕を前にした去る11月7日、福岡市の八仙閣本店で「中央大学出身力士を激励する有志の会」(代表世話人・石橋和幸氏。昭57理)が開催され、現役力士と親方が招かれた。例年、九州場所直前に催される恒例行事で、今年で30回目となった。
「中央大学ならでは」の会
現在、中央大学出身の現役力士は、一山本、豪ノ山、風賢央、栃武蔵、矢後、納谷の6名(番付順)。当日は6名全員と大鳴戸親方(元大関・出島)、押尾川親方(元関脇・豪風)が出席。服部誠太郎福岡県知事(昭52法)をはじめ多くの学員が九州各県、沖縄や東京からも参集、白門力士を激励し金一封を進呈した。
同会設立の経緯について、発足時からの世話人の一人である片山隆之事務局長(昭37経)は「30年前に当時の高木友之助学長から〝文学部出身の十両・武哲山を福岡で応援してくれ〟と頼まれたのが発端。学員会福岡支部の仲間と継続的に応援しようと会の設立に至った。13名で始まった会も、いまや50名近い会員となった」と経緯を紹介。さらに「現在の世話人の石橋氏をはじめ、九電工歴代社長や服部知事ら著名な卒業生と、現役力士・親方とが語り合える場は中央大学ならでは」と語り、会の意義を強調した。




次代の「白門力士」への期待
近年、世界的にも人気が高まっている大相撲。昨年10月15日から同19日まで、34年ぶりとなる英国で「大相撲ロンドン公演」も行われ、その模様はメディアに多く取り上げられた。このロンドン公演には、豪ノ山関と一山本関も参加している。大相撲の海外公演は日本の伝統文化を世界に発信する機会として位置づけられており、今年の6月13・14日にはパリでの公演も予定されている。
過去多数の学生横綱やアマチュア横綱を輩出している中央大学相撲部は、昨年8月14日開催の「第60回全日本大学選抜相撲十和田大会」では、見事団体優勝を果たしている。この中から、また新たに大相撲力士が誕生することが期待されている。
大相撲は東京、名古屋、大阪、福岡での本場所のほか、年間で多くの地方巡業・公演も行われている。今回の、激励する有志の会の参加者からは、白門の絆を礎に、力士たちを励ますこうした会が全国各地で開催されることを望む声も出された。
※ 写真は同会に特別招待を受けた中大スポーツ新聞部・松岡明希記者(法3)が撮影。
現役で活躍する白門力士(番付順)
一山本大生(いちやまもと・だいき)(平28商) 東前頭筆頭
豪ノ山登輝(ごうのやま・とうき)(令3法) 東前頭九枚目
風賢央厳太(かぜけんおう・げんた)(令4法) 東十両十枚目
栃武蔵陽太(とちむさし・ようた)(令3法) 西幕下筆頭
矢後太規(やご・たかのり)(平29法) 東幕下二十八枚目
納谷幸林(なや・たかもり)(令2法) 東三段目三十八枚目
※ 近年の各場所の戦果と番付は白門オンライン「白門力士」(https://gakuinkai.net/rikishi/)に掲載
自校史
中央大学と大相撲 ― 角界の異彩を続々輩出
中央大学相撲部は、戦前から続く歴史を持つ。「全国学生相撲選手権大会」での団体優勝や学生横綱の輩出など、長く学生相撲界の強豪としても知られている。全国学生相撲選手権大会では団体優勝6回、学生横綱5名を輩出しており、その伝統は現在も続く。
力士の息子の哲学者
戦後、大学相撲出身者が角界入りする道が広がる中で、中央大学から最初に関取となったのは豊國範(とよくに・すすむ)である。大分県中津市出身。中央大学相撲部の主将を務め、1960(昭和35)年に時津風部屋へ入門した。幕下付出資格で初土俵を踏み、翌年に新十両、翌々年に幕内入り。最高位は小結で、技能賞・敢闘賞を受け、横綱から金星を挙げた。学生出身力士としては戦後最初期に三役に昇進した例であり、中央大学出身力士の先駆とされる。
豊國の活躍以降、大学での体系的な稽古と精神的成熟を備えた学生出身力士が角界で評価されるようになった。中央大学相撲部もその流れの中で存在感を高め、全国大会の常連校として学生相撲界を支えていった。
中央大学と相撲を語る上で欠かせないのが、哲学者の高木友之助氏(1923–2000)である。1990(平成2)年11月6日に中央大学学長・総長に就任し、1993年まで学長、1996年まで総長を務めた。高木氏は明治期の元小結・緑嶌(みどりしま)友之助(本名・高木友之助)の子である。緑嶌は立浪部屋を興した力士として知られ、父子ともに同名という縁もあり、親子二代にわたって相撲と学問の世界に名を残した。
高木氏は総長時代の1994年には、日本学生相撲連盟の会長に就任。大学総長が同連盟の会長を務めるのは異例だった。
なお余談だが、学員でザ・ドリフターズのメンバー・高木ブー氏(昭31経)は本名を高木友之助といい、2人は同姓同名の縁で親交があった(本紙2023年10月号)。
角界の異彩を続々輩出
高木氏が相撲部長を務めた時期に角界入りしたのが、武哲山剛(むてつやま・ごう)である。2年生でアマチュア横綱となり、相撲部の主将を務めた4年生時は、3年生の若孜浩気(わかつとむ・ひろき。最高位・東前頭12枚目)、2年生の玉春日良二(たまかすが・りょうじ。同・関脇)、1年生の出島武春(でじま・たけはる。同・大関)らと、「第70回全国学生相撲選手権大会」で団体優勝を成し遂げた。武哲山は現役時代、相撲に関する博学ぶりに「相撲博士」の異名をとった。西十両11枚目が最高位で引退するが、その後は筑波大学大学院体育研究科に入学して、コーチ学を学ぶ。修了後は私立高校の地歴公民教師として教壇に立つとともに、相撲部顧問として高校生力士の指導育成にあたったが、2013(平成25)年に42歳の若さで急逝した。
中大出身力士で幕内上位へ進出したのは、前述の出島、玉春日、そして豪風旭(たけかぜ・あきら 同・関脇)である。出島は鋭い突き押しで平成を代表する大関の一人となり、玉春日は安定した差し身で長期にわたり三役を維持。豪風は粘り強い相撲で通算100場所、40歳まで土俵を踏んだ。
現在、中央大学出身で、現役力士は、卒業後に公務員となりながら再び相撲の世界に入った一山本など6名。魁道康弘(かいどう・やすひろ 同・東十両4枚目)は引退後実業家になるなど、個性豊かで話題性ある力士ばかりである。親方は、大鳴戸親方、押尾川親方、片男波親方(元関脇・玉春日)の3名。
中大生の学生横綱(「全国学生相撲選手権大会」個人戦の優勝者)
高須晃(1952年)、照井久見(1954年)、石黒馨(1956年)、成田旭(豪風。2001年)、菅野陽太(栃武蔵。2018年)
中大生のアマチュア横綱(「全日本相撲選手権大会」優勝者)
栗本剛(武哲山。1990年)、矢後太規(矢後。2016年)
