芳井敬一新会長 就任インタビュー
令和7(2025)年5月の定時学員総会で選出・承認された学員会・芳井敬一会長に、今後の学員会運営についてインタビュー。会長は、「10年後の中央大学創立150周年を見据え、学員会が大学に果たすべき役割は何かを考え、それを担う人財育成に取り組む」とし、以下のように語っている。
10年後を見据えた
人と組織づくり
―― 学員会会長への就任にあたっての所信から伺います。
芳井 前任の久野名誉会長の大きな功績の後を継がせていただくのは大変なことで、とても同じようには務まらないと思います。そう申し上げたうえで、私なりの今の時点での考えをお話しします。
私は会社でも、社長を受けるときに、その職になりたいかどうかよりも、その職に就くことで、その組織に何が貢献できるかが分かっていなければ、なるべきではないという考えでやってきました。今回も同じです。私は中央大学を卒業したことで多大な恩恵を受けていると感じています。そのことに感謝するために何ができるかを考えています。所属する南甲倶楽部から学員会会長をという話があった時、お世話になった母校に、私として何が貢献できるのかを考えました。学員会は学校を愛する人たちがたくさんいる。そのエネルギーをさらにまとまりのある方向に持っていければいい。それを自分の普段着の姿でやれば、それが貢献になると考えました。
学員会の会長職も会社の社長職とよく似ていて、なった瞬間から何を考えるかというと、「次をどう譲るか」です。私の持論は「人財育成」です。次を選ぶのが自分の仕事、次を育成しておくのも自分の仕事、そう考えています。では、学員会での次の世代とはどんな世代なのか。私が就任したら、偶然にも大学の150周年が10年先にある。10年先の大学ってどんなだろうか。その時、学員会はどういう役割を果たしているのだろうか。10年先、私はまだ生きているでしょうが、学員会の要職を務めてはいないでしょう。私の第一の仕事は、大学が150周年を迎える時に、学員会をまとめる人たちを創ることです。
大事なのは
「決め方」を決めること
―― 学員会の組織運営のプランは。
芳井 私が常に大事にしているのは、「決め方」を決めること。そして「納期」です。何をどうするかについて、大勢の人がそれぞれに考えを持っていて、なかなか決まらないこともある。けれども、決め方と納期を決めておけば決まります。決め方が多数決ならそれでよい。納期を決めて、その納期を守るためにトップが独断してもよいというのなら、そのルールで独断します。とにかく、決めたことを決めた納期に実現させる。そのためには、決めたら一致団結して進む。学員会も、そういう組織でなければと考えます。
学員会というのは大きな組織です。学員から会費を預かって運営していますから、どのようなことを決め、どのように行っているのかをしっかり見えるようにしていくことも大切だと思います。
「次をどう譲るか」だと申し上げましたが、育った世代がまた次の世代を育ててくれるようになる。常に代替わりしていく。代替わりが大事なのは、トップによって日の当たる人もいれば、日の当たらない人もいるからです。スポーツでも守備優先のチームを作る監督もいれば、攻撃重視のチームを目指す監督もいます。どちらが正しいということではなくて、代替わりがあると、それまで日の当らなかった人に、ひょっとしたら日が当たるかもしれない。トップが代わって日が当たらなくなった人は、そもそも日が当たっていたような実力のある人なのでまた頑張ることができる。27万人以上が参加する組織がまとまれば、普通ではない力を発揮するに違いありません。
現役学生を
学員一同で応援したい
―― 中央大学にこうあって欲しいと望むことは。
芳井 しっかりした教育の提供が一番、資格試験にも強くあってほしい。私は体育会出身ですが、「中央大学で思い切り競技ができる」と思って入学しても、入ってみると環境が十分には整っていないというのでは残念です。現状は、寮もグラウンドも十分ではない。大学スポーツは設備が充実していないと他大に追いついていけない。スポーツ推薦制度を採っている以上、施設の充実は大学の使命だと思います。それは卒業生が支援できることですから、学員会を挙げて応援していきたい。
過去の多摩移転についてはこれまでもいろいろ言われてきましたが、多摩に移転したからこそできることもあるはずで、そういう強さも見せてほしい。これから多摩に新学部もできるようですから、総合大学としてもっともっと幅広く成長してほしいと願っています。
私は中央大学に入って本当に良かったと思っています。周囲の同窓生には、「仕事で同窓の先輩に助けてもらった時、箱根駅伝を応援しながら楽しい会話ができた時など、中央大学で良かったなと思うその時、大学に何か恩返しをしようよ」と呼びかけています。
そして現役の学生や、大学入学前の受験生たちにも「中央大学を出たらいいことがあるぞ」と言えるような大学にしていきたい。そのために学員会は何をすればいいのかを、大学と連携しながらしっかり考え、実行していきたいと思います。とにかく目指すのは、みんなが満面の笑みになれること。大学も満面の笑み、学生も満面の笑み、OB・OGの人たちも満面の笑み。そこに向かっていくということが大事だと思います。
今回、学員会の会長をさせていただくことは、大変な重責だと思っています。150周年にあたる10年後の大学に、学員会が果たす役割が何かを定め、 それを担える人財の育成に取り組んでまいります。

(昭56文)
芳井 敬一 氏
中央大学学員会会長
よしい・けいいち
昭和33(1958)年大阪府生まれ。大阪府立大和川高校(現・大阪府教育センター附属高等学校)にてラグビー部に入部。大阪市代表チームのキャプテンを務め、中央大学文学部哲学科教育学専攻に入学。志望動機はラグビー部監督に薦められたことと、教職課程があったこと。当時、将来の希望は教員だった。在学中は体育連盟ラグビー部に所属し寮生活。同56(1981)年に卒業し、神戸製鋼ラグビー部で約3年間、関西社会人リーグでプレー。神戸製鋼グループに約9年間在職し、平成2(1990)年に大和ハウス工業に転職。建築営業に従事後、神戸建築営業所長、姫路支店長、金沢支店長を歴任し、同22(2010)年執行役員、同29(2017)年代表取締役社長就任。令和7(2025)年4月より代表取締役会長CEO。同4(2022)年より大阪商工会議所副会頭。同5(2023)年より中央大学南甲倶楽部会長。同7(2025)年より学校法人中央大学評議員。
