留学生支援から世界とつながる学びへ〜中央大学国際センターの40年
中央大学の国際交流は、制度整備から学生同士の交流まで多層的に発展してきた。本稿では、国際センターが築いてきた40年以上の歩みとともに、その取り組みが学生にもたらした具体的な広がりとして、「沖縄Peace Tour」を通じて生まれた国際的なつながりを紹介する。

1981年から国際化をけん引
中央大学国際交流センターは、1981(昭和56)年に設立され、翌1982 年に正式発足した。同センターは、学長室学事課国際係の機能を引き継ぎ、外国人留学生の受入れや海外大学との交流を制度的に整備する役割を担った。以来40年以上にわたり、国際理解教育の中核として、留学生支援、海外派遣、国際シンポジウムの開催など、大学の国際化をけん引してきた。
1980年代にはアジア諸国との大学間交流を基盤に、国際的視野を持つ人材育成を推進。1997年には「平和についての対話」をテーマに、国内外の学生約100名が参加し沖縄を訪問する「沖縄Peace Tour」を実施した。これは、多文化理解と協働を実践する先進的な試みであり、現在も参加者間の国際的な交流が続いている。
2000年代に入ると、センターは学術面での国際発信にも注力。2010年には創立125周年を記念し、後楽園キャンパスで国際シンポジウムを開催。卒業生や海外協定校の代表が講演し、「国際社会へ巣立つ中大生」をテーマに、多様な視点からの議論が行われた。同年にはベトナム・ハノイでも「大メコンプロジェクト」国際シンポジウムを開催し、地域産業や環境経済に関する共同研究を展開。中央大学がアジアの発展に学術的貢献を果たす姿を示した。
Gスクエア開設で加速
中央大学は、グローバル社会における実践的知性を備えた人材の育成を使命とし、教育・研究・社会連携の各面で国際化を進めてきた。2012年度には文部科学省の「グローバル人材育成推進事業」に採択され、海外留学の促進、語学教育の充実、キャンパスの国際環境整備を本格的に開始した。この事業を契機に、多摩キャンパスには国際交流と語学学習の拠点である「Gスクエア」が整備され、学生が日常的に異文化に触れられる環境が形成された。
創立130周年を迎えた2015年には、10年計画「Chuo Vision 2025」を策定し、「世界に存在感のある大学」を目指してグローバル教育体制の構築を進めている。この中で、語学教育の高度化、国際教養教育の体系化、外国人教員の採用拡大、国際共同研究やダブルディグリー制度の推進などが位置づけられている。また、国際情報学部や国際経営学部など、多文化社会に対応した新学部の設置にもつながっている。
留学生は968名
留学生数は年々増加し、1990年代の約200人から、2010年代には800人を超え、2025年5月時点では968名に達している。こうした拡大は、交換留学協定の増加や、受入体制の整備、多文化共生キャンパスの形成に支えられている。現在、中央大学は「グローバルな視野と実地応用の力を備え、人類の福祉に貢献する人材の育成」という理念のもと、国際センターを中心に多面的な取り組みを展開している。長期・短期の交換留学、認定留学、ISEP派遣など多様な留学制度を設け、学部独自の海外派遣プログラムも実施している。さらに、キャンパス内で多様なバックグランドの学生が生活を共にする《国際共修の場》としての国際教育寮や異文化交流ラウンジも2020年に開設、その活用を通じて国内キャンパスの国際化も進展し、TOEFL・IELTS対策講座など語学支援も体系的に整えられている。
2024年には新たな国際化戦略である「本学の国際化の将来構想について-実現可能性を重視した多面的な国際化の展開-(Chuo Global-X)」を策定。①グローバル人材育成・海外ネットワークの拡大、②教育研究の国際化、③国際化の体制整備という包括的な展開を図る内容で、グローバル・アントレプレナーシップ・イニシアティブ、高大連携、協定校拡大などの取り組みを包含する43の具体的な施策を工程表に基づき進めている。
新しい国際教育を構築
中央大学国際センターの国松麻季所長は、海外留学経験のある学生や現役の留学生による、在校生に経験や知識を分かち合う取り組みが本格化しつつあることを踏まえ、「国際センターでは留学に関するサポート体制を整えている」とし「本学での学びがより充実するよう力強く応援していく」としている。
さらに国松所長は、「国際交流は一過的な体験ではなく、生涯にわたる学びと共感の場である」と述べたうえで、「学生が国際社会の多様な価値観に触れ、そこで得た経験を卒業後も長く生かしていけるよう、学内外のネットワークをつなぐ仕組みづくりを一層進めたい」と強調している。また、「キャンパスの国際化は、留学生が増えるだけで完結するものではなく、日本人学生が世界と交わる“日常”をどう創るかが重要である」と指摘し、対面とオンラインを組み合わせた持続的な国際学習コミュニティの形成に意欲を示している。

(国際経営学部教授/副学長)
1981 年の設立から四十余年、中央大学国際センターは、学生一人ひとりの人生に国際的な広がりをもたらす“学びの架け橋”として、その国際的存在感をさらに高めながら、次の世代へその理念を受け継いでいく。
沖縄Peace Tourが開いた“世界への扉”
国際交流が生んだ生涯の友情
1998(平成10)年経済学部卒の中澤泰士氏は、国際交流センター(当時)の取り組みを象徴する卒業生の一人である。氏が参加したのは、1997 年に実施された「沖縄Peace Tour」。留学生を含む約120 名が6 日間にわたり交流を深めるプログラムで、同氏は「一生の友を得ることができ、人生のDefining moment になった」と振り返る。

中澤氏はツアーにはキャンセルの代替として急遽参加したため自己紹介シートは提出していなかったが、そこで結ばれた縁は今も続く。現在でも5~6名と交流があり、特にスウェーデンのMaria Malmberg 氏、マレーシアのLam Wai Yee 氏、日本の坂本貴文氏の3名は“親友”と呼べる存在だという。
Maria 氏は大手建設会社SKANSKA で管理職を務め、現在はウプサラで家族と暮らす。息子のマーティン氏は脳性麻痺があり、2023年には中澤氏の勤務先であるCYBERDYNE 社の装着型サイボーグHALを利用したリハビリのため来日し、その取り組みがスウェーデンの雑誌にも取り上げられた。Lam氏はマレーシアで日本茶のカフェを経営し、2、3店舗目を伊勢丹と西武百貨店に出店したばかり。坂本氏は靴専門店・リーガルの店長として働き、4人は互いの国を行き来しながら友情を育んできた。




中澤氏自身は現在、CYBERDYNE の新規事業開発部門の責任者として、ロボット技術やHAL の社会実装を推進している。こうした国際的な友情とキャリアの広がりをもたらしたPeace Tour は、氏にとって特別な経験であり、2027年の30周年に向けて再会イベントを企画している。「当時の仲間にまた会いたい」という思いを胸に、同窓会開催の呼びかけを続けている。
