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母校・中央大学を想う 学員からの提言

中央大学が今後とも私学の雄として社会に存在感を示していくためにはどうあるべきか
本欄では、各界で活躍する学員からの提言を掲載していく。(連載)

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「ChuoVision 2025」に思う
 ピンチをチャンスに

2017年(平成29年)3月24日
大森 清司(昭35法)

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 多くの中大同窓生の最近の話題といえば、今年の箱根駅伝に中大が出場できず、87年の連続出場を逃したことである。確かにこれは中大不振の象徴ではある。しかし、実はもっと重大なことがある。それは、2015年に発表された中長期事業計画「Chuo Vision 2025」の実現の可能性のことである。
 首都圏の大学で、いわゆるMARCHと言われる大学でも、近年中大のランクは下がり気味である。そこで劣勢を挽回すべく、「ChuoVision2025」が公表されたわけである。ところが、その具体化、行程表、資金調達計画、募金の状況などが一向に明らかにされないのは問題である。推進委員会はできているが、予定どおり実現できるのかが心配される。
 まず、大学の都心展開の問題である。多摩キャンパスが現代の学生たちにあまり人気がないことは、長年指摘されてきた。いまだったら私も中大法学部へは行かなかっただろう。しかし、自然環境豊かで広大なキャンパスを一挙に都心に移転させることなどは、財政的にも物理的にも不可能である。

 そこで、一部の学部のみを移転させる案が出てきた。とりあえず法学部のみを移転させ、市ヶ谷の法科大学院と一体化運営するという。まずは妥当なプランである。しかし、これ以上詳細な計画は依然として不明である。
 また、新学部を複数開設する計画がある。中大は、学部の新設において他の大学に大きく後れをとった。ただし、学生の人気取りのために、やたらカタカナの名称の学部をつくったところで、教育上意義があるとは思えない。総合政策学部を改組するというが、たとえばむしろ、「総合人間学部」(仮称)なる部を創設してはどうか。そこでジェンダー論、健康福祉論、スポーツ科学、キャリア形成論などの学科をつくるのである。問題は、学部としての魅力や社会的ニーズ、学部の採算性、適切な教員の確保である。あまり無理はしないほうがよい。

 次にスポーツの振興である。前述のように、箱根駅伝の不振は問題ではある。しかし、大学スポーツは駅伝だけではない。プロスポーツ選手の養成所でもない。大学の名を売るために、スポーツだけの学生を入学させてよいのかという問題もある。大学の理念が問われる。
 そこで新設の学部を活用する方法もある。優秀な運動選手をスカウトするには、OBの働きかけや、練習や宿泊の設備もいるし、奨学金もいる。大学スポーツの振興には、多くの金がかかる。いまのところ、この資金手当てが不明である。
 また、大学のグローバル化も目標になっている。中大生は伝統的に語学力が弱い。文部科学省の助成も受けられない。また外国人教師も少なく、設備もよくない。
 私が同窓会長をしている千葉県の高校には、ネイティブの教員も一部いるし、ハーバード大学とも交流をしている。併設中学校のICT設備はいまの中大よりも進んでいる。
 グローバル化は、全学横断的に行う必要がある。入学試験の改善、外国人教員の増強、留学生対策、ICT設備など、資金も大きくかかるだけに、グローバル化へのハードルはかなり高いと言わざるを得ない。

 さらに、基本的なことだが、中大が今日まで他大学より後れをとった理由の一つに、大学としての意思決定の弱さがある。一部細則の改定は行われつつあるが、中大の学則(定款)は、理事長、総長、学長、教授会が、それぞれ別個の権限を有し、大学としての意思のベクトルを合わせるのが難しい。
 中大の基本的ガバナンスを改革するため、名目的になっている「総長」の権限を強化し、より求心力のある職務にしてはどうか。近時の中大総長は、無難に学長の兼務とされてきた。しかし総長は本来大学の「象徴」でなければならない。本当に世界に存在感のある大学を目指すのであれば、中大出身者にこだわらず、ノーベル賞クラスの学者でリーダーシップのある方を招聘してはどうだろうか。このほうが、箱根駅伝で優勝するよりも、はるかに高校生・保護者や一般社会にインパクトがあるはずである。
 教職員の皆さんも「多摩のぬるま湯」に浸かっていないでほしい。メディアにも積極的に出るべきである。

 最後に、卒業生、学員、学員会への提言をしたい。よく中大は団結力に欠けるといわれる。慶應義塾大学には強固な「慶應連合三田会」があり、寄付集めなどに熱心である。日本の大学は、実はどこも経営が苦しい。主な収入といえば、学生からの納付金と文部科学省からの経常費補助金である。私学へは1割にも満たず、特に中大は私立の25位に甘んじている。
 だからこそ文科省の天下り問題が出る。支出は教職員の人件費と研究費、設備維持費である。剰余金や内部留保は少ない。だから、新規の事業を起こすには、借金か寄付しかない。
 ところが中大は、寄付金が集まりにくい。しかし箱根駅伝で、多くの卒業生が嘆いているいまこそが、資金集めのチャンスではないか。大学運営には、金がかかる。大学をよくするには、卒業生の活躍と支援が要る。駅伝をはじめとして大学を強くするために、ぜひ浄財をお願いしたいと大いにPRするのである。
 大口の寄付はいまの時代に難しい。各支部から集めるにも限界がある。大勢の小口の資金こそが、大学の優劣を決める。
 いまやネットの時代である。アメリカの大統領選挙、最近の映画製作などを見ると、一般の人から資金を集める「クラウドファンディング」が主流となっている。パソコン、スマホによる参加を一層推進すべきである。
 広報戦略には、ビジネススクールの知恵も借りてはどうだろう。学員会事務局のローテーション人事も長期化して、大学と卒業生とのコミュニケーションをもっと緊密化する必要がある。法人理事や学員会役員も単に名誉職ではなく、寄付集めが主な仕事と肝に銘じてほしい。思い切った役員若返りも必要である。
 慶應義塾大学の塾長や国際基督教大学の理事長の最大の仕事は、寄付集めだと聞いている。中大がピンチのいまこそ、大学復興のチャンスである。

大森清司(おおもり・きよし)氏

 1960年(昭和35年)法学部卒。キッコーマンに入社し、2002年(平成14年)代表取締役専務、2010年(平成22年)退社。元中央大学理事、学員会幹事。千葉県立東葛飾高等学校同窓会会長。

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