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母校・中央大学を想う 学員からの提言

中央大学が今後とも私学の雄として社会に存在感を示していくためにはどうあるべきか
本欄では、各界で活躍する学員からの提言を掲載していく。(連載)

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ガバナンス改革 今が最後のチャンス
学部の垣根を越え、一体感をもった行動が必要

2015年(平成27年)9月25日
藤沼 亜起(昭43商)

画像  少子化の時代、国際競争の時代を迎えた今、中大のさまざまなランキングが低下し続けていると聞き、非常に残念な思いでいる。受験生の減少、さらに18歳人口が減り始める2018年問題もある中で、これから大学がどう行動するかが勝負の分かれ目であり、教職員や理事会の実行力が問われている。

 私は1968年(昭和43年)に商学部を卒業し、公認会計士(第二次試験)に合格後、会計士の道を歩んできた。国際会計士連盟の会長や国際会計基準の策定組織を運営するIFRS財団評議員会の副議長を務めるなど、国際業務が多かったこともあり、中大の国際化への対応の遅れは非常に気になるところである。

 その代表はスーパーグローバル大学の採択校から漏れたことだろう。他大学は、国の意図を先取りした未来図を描き、示している。しかし中大は、学部や学科レベルでの対応になってしまい、大学本部が強力な調整力を発揮できなかったように思う。真面目で正直なのは中大の美点だが、それだけでは見劣りするし、ビジョンを総合的にコントロールする存在がいなかったことが原因ではないだろうか。

 また、中大は資格試験に強い大学である。しかし、資格試験と国際化の間にはジレンマがある。本来は、在学中に海外留学の体験ができればいいのだが、資格試験合格のためには邪魔になってしまう。そのため、中大生は国際性がなく、伸び代がないと思われてしまっているのではないか。もちろん、今も国際センターをはじめとして積極的に動いているところもあるが、ほんの一握りが関わっているだけで、大部分は無関係。国際的な大学となるには、全学を挙げ、徹底したガバナンス改革をしなければならない。

 大学のブランド力についても考え直す必要がある。もちろん、「法科・法曹の中大」は素晴らしいブランドだ。しかしそればかりを押し出していると、法学部以外の学部はどうか、となってしまう。『東洋経済』のデータでは、「上場企業役員の出身大学ランキング」(2014年7月現在)において、中大は969人で慶応、早稲田、東大、京大に次ぐ5位、公認会計士合格者数のランキングも毎年2~3位をキープしている。これはかなり大きな強みであり、もっと外に示していくべきである。理工学部も優秀だ。中大は全体的にレベルが高いということをもっとPRをしてほしい。

 私は今年3月まで、ビジネススクール(CBS)の特任教授として、後楽園キャンパスで教鞭を執っていた。そこから多摩を俯瞰してみると、中大は独立した個々の研究者を持つ組織、つまり共同体(ゲマインシャフト)的組織であるという印象を受けた。外部目的に応じて作られる企業のような機能体(ゲゼルシャフト)的組織とは、いろいろな面で異なる。それぞれの学部がサイロ状態、自己完結型となり、相互連携や協力体制が弱いのではないだろうか。各学部の意向や独立性が尊重される部分最適となっているため、やはり全体最適の立場で、さらに優先順位をつけて進めていくことが重要である。

 そして、これからの社会で求められる人材は、幅広い知識と経験がある人である。たとえば、企業のCEOや役員という立場になる人は、会計のことがわかっていないといけない。CBSで教えていると、会計よりも戦略の授業を求める人が多かった。しかし会計を理解せずに、戦略を立てることはできない。私は法学部でも理工学部でも、会計の知識があったほうがいいと思っている。商学部卒の私がCBSの特任教授になるということで、驚く先生方もいた。しかし、そういった学部の垣根を取り払い、横断的に考えないといけないのではないだろうか。

 経営には「PDCAサイクル」という言葉がある。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4段階を繰り返すことだが、極端に言えば、中大はPだけで、DもCもAも見えてこない。中大の将来構想や事業計画は作成されているし、良いレポートも出ているが、実行に移されていない。そして誰が責任者なのか、いつまでにやるのかもはっきりしていない。自分たちが正しいと思うことと、社会のニーズが大きく乖離してしまわないよう注意しながら、とにかくActionに結びつけなければならない。

 新しく学部をつくるのもいいが、今あるものを活かして構造改革を進めるのが望ましい。その中で横断的な連携を強め、全学を挙げて、何ができるかを考えることが重要だ。過去のキャンパス移転を嘆くより、これからの多摩キャンパスをうまく活かす切り口を探すなど、将来的に一番いい形にしていかなければならない。

 10~20年後、このままでいくと、中大はかなり冴えない大学になってしまうだろう。学員だって、教職員だって、そんなことはプライドが許さないはず。1000人近い上場企業役員を出している今こ、Actionに移るときだ。「これが最後ですから」というくらいの気持ちで愛校心に燃える学員を引っ張り、大学がきちんと説明した上で寄付を募るなど、一体感をもった行動をすることが必要である。54万人の学員は、大きな資産。それを活用しながら動き出すには、今が最後のチャンスなのである。

藤沼亜起(ふじぬま・つぐおき)氏

国際会計士連盟会長、IFRS財団評議員会副議長、日本公認会計士協会会長等を歴任。現在はCBSフェロー、野村ホールディングス社外取締役、セブン&アイ・ホールディングス監査役等。

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