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母校・中央大学を想う 学員からの提言

中央大学が今後とも私学の雄として社会に存在感を示していくためにはどうあるべきか
本欄では、各界で活躍する学員からの提言を掲載していく。(連載)

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中大のプライドを持ちつつも
競争に勝つために 何をすべきか考えよう

2015年(平成27年)6月10日
田中 克郎(昭43法)

画像 鹿児島で生まれた私は、子供の頃、海外で活躍する自分を夢見た。中学2年で、異国情緒ある神戸に移り住み、その思いは強くなった。そして一方で、司法試験に合格し、法律の道に進みたいとも考えるようになっていた。私たちの頃は、司法試験合格と言えば、東大と中大しかないと言われていた。成績上位者は東大や京大等を目指した神戸高校にあって、私は中大進学を決めた。50年前のことである。

 最近は弁護士が増えて業界での競争が激しくなったと言われているが、私が弁護士になった四十数年前でも、上場企業、有名・有力企業にはみな錚々(そうそう)たる先生方やその事務所が顧問になっており、駆け出しの弁護士が顧問先を開拓するのは大変だった。その中で、私は、当時まだ顧問弁護士を持つ習慣がなかった業界を開拓した。例えば映画業界やファッション業界などは、口約束が当然のような業界で、契約書も少なかった。知財の分野は、いまや弁護士の大きな仕事の領域だが、当時、この分野を扱う弁護士はほとんどいなかった。しかし、アメリカの映画会社やフランスの有名ブランドとの交渉となれば法的な契約が必須で、弁護士が必要になる。この分野なら開拓の余地があると考えた。

 知財分野と訴訟に強い弁護士を中心に25年前に設立した私どもの事務所は、現在、330名の弁護士と70名の弁理士を擁する大型事務所になった。弁護士数では国内五指に入る事務所で、毎年、新人弁護士も多数採用している。私としては母校中大の学生にも来てもらいたいと思っており、採用担当者にもそのことをお願いしているが、なぜか、採用面談の申込者は他大学に比べて少ない。いろいろ聞くと、面談を申し込む前に諦めてしまうらしい。東大や慶大の学生は、「当然、採用されるだろう」という感じで事務所訪問に来るが、中大生はやや慎重すぎるように感じられる。

 また、他大学の先生は教え子の弁護士事務所への就職支援にも実に熱心だ。いまや大学の先生は、教え子を司法試験に合格させるだけでなく、その先の支援も必要だということを理解していただきたい。

 もちろん、大手の弁護士事務所に入ればそれで安泰ということではない。大手であれば一段と厳しい競争にさらされる。例えば、夜遅くに顧問先の企業から連絡が来て、朝までに契約書を作ってくれと頼まれるなどということはざらである。それを徹夜で仕上げる。断れば、他の弁護士、他の事務所に仕事を依頼されることになる。いま、若い弁護士はそのような中で仕事をしている。

 競争に勝ち残るためには、やはり特色が必要だ。私どもの事務所では、新人弁護士の採用では成績だけでなく、会計士や医者あるいは一級建築士など弁護士以外の資格も重視している。英語以外の語学ができるとか、理科系出身など他とは違う特色ある人材を求めている。おそらく他の大手事務所でも、同様の傾向が出てくるだろう。だとすれば、中大の司法試験合格者への支援の方法、ロースクールや学部の特色づくりも見えてくる。

 また、優秀な人材の育成には、優秀な先生を集めることも重要だ。法曹界に限らず、日本において東大は一つの大きな力を持っており、人材の宝庫でもある。中大も長い歴史の中で、多くの東大の先生が教えに来られ、そこから多くの人材が育った。中大のプライドを持ちつつ、競争力を強化するという観点では、他大学の実績や成果を学び、受け入れることが大切だ。都心移転や学部新設がままならないなら、他大学との合併など、大胆な発想も必要だろう。

 中大に入った私は、恩師、そして先輩に恵まれたこともあり、在学中に試験に合格し、修習生を経て弁護士になった。最初に勤めた事務所は、アメリカ人の弁護士事務所だった。夢がかなうと思ったら、その事務所の仕事は、海外に行く仕事ではなく、アメリカから日本に来る企業の仕事ばかりだった。そこで、海外に行く機会のある事務所に移り、さらにアメリカのロースクールに留学した。それらのチャンスを与えてくれたのも、みな中大の先輩だった。

 アメリカでの経験で、やがて日本の弁護士事務所もアメリカのように大型でなければ生き残れなくなると確信した私は、帰国後、大きな事務所を作りたいと周囲に言った。当時は「弁護士事務所は2、3人で十分」という考えが大勢で、理解してくれる人は少なかった。しかし、私はその信念を曲げず、また時代もそのように進んだ。世界に通用する弁護士事務所にするためには企業経営の視点が必要だ。企業経営というと金儲けかという人がいるが、それは違う。金を儲けたいなら、実業家になって弁護士を雇う。私はこれからも、TMI総合法律事務所を世界的な規模の事務所にしていくことに力を注いでいく。そこに、中大卒の優秀な弁護士にも参加してもらいたい……その実現が、私の立場での母校への貢献であると考えている。

 母校に願うことは、10年先を見据えたビジョンを描き、法人・教学が一致団結し、企業経営の視点を持ち競争に勝ち残る取り組みを行っていくこと。我々学員は、それぞれの立場で後輩にチャンスを与え、可能な母校支援を行っていくことにある。

田中克郎(たなか・かつろう)氏

TMI総合法律事務所代表。鹿児島銀行監査役、アシックス社外取締役。
サントリー文化財団監事。

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